農薬を散布するときにいっしょに使う展着剤。
機能性展着剤、一般展着剤、固着剤など種類がいろいろあります。
どれも同じようなことが書かれていてどれを選んだらいいのかわからないなぁ
どれもいっしょなんでしょ?とにかく浸透性がよくなるんじゃなかったっけ….?
説明書きを見てもどれも同じようなことが書かれていて逆に迷ってしまうという意見も。
実は展着剤の種類それぞれに特徴があります。
もしも選択をあやまると効果が下がったり薬害が出たりしてマイナス方向にはたらいてしまいます。
この記事では薬害で作物を傷めてしまわないために、農薬の効果を引き出す展着剤のじょうずな選び方を説明していきます。
展着剤の種類
商品タイプ | 代表的な商品 | 特徴 | 希釈倍率 |
---|---|---|---|
機能性展着剤 | アプローチBI | 浸透性を高める効果がある、一部組合せで薬害に注意、殺菌剤向き | 1000~2000倍 |
スカッシュ | 親油性があるので害虫の体や卵の表面に付着しやすい、殺虫剤向き | 1000~2000倍 | |
ニーズ | 展着剤自体が殺菌性を持つ、病害虫の細胞膜に吸着するため効果が増す | 1000~2000倍 | |
ドライバー | 2020年開発、濡れ性と付着性が高い、浸透性は低い、濡れにくい作物用 | 1000~5000倍 | |
一般展着剤 | まくぴか | 低濃度で使える、シリコーン系、泡立ちやすいので最後に投入 | 3000~10000倍 |
グラミンS | グラミンの泡立ちを抑えた、安価で低濃度で使いやすい | 3333~20000倍 | |
除草剤専用展着剤 | サーファクタントWK | 除草剤の効果を高める機能性展着剤 | 200~2000倍 |
固着剤 | アビオンE | パラフィン主成分のワックス固着展着剤 | 500~2000倍 |
ドライバーは、花王株式会社が開発した植物原料由来の新しい高濡れ性展着剤(アジュバント)です。農薬散布時に薬液をはじいてしまうようなワックスの強い作物に対し、特に効果を発揮するよう設計され、散布した薬液をより確実に作物表面へ付着、拡展させます。
丸和バイオケミカル株式会社「ドライバー 機能性展着剤」
展着剤のきほんの使い方
まずは基本的な使い方からみていきます。薬液をつくるときに農薬や展着剤を水に加える順番があります。それを覚えやすいように言葉にしたものが「テ・ニ・ス」です。
- 「テ」・・・展着剤
- 「ニ」・・・乳剤
- 「ス」・・・水和剤、フロアブル剤
まずは、農薬を入れたときに水自体を混ざりやすい液体にしておきます。それから順に、乳剤、水和剤・フロアブル剤と入れます。また、水和剤の中には、水と混ぜると発泡して水面に浮いてしまい混ぜるのに手間がかかってしまうものがあります。少量の水を入れた別の容器で一度発泡させてから、タンクに入れるとさらにスムーズに混ざります。
他にも、乳剤やフロアブル剤には界面活性剤が入っているから展着剤の添加は不要であるという意見を見かけることがあります。メーカーに確認したところ、乳剤やフロアブル剤に入っている展着剤は水に溶けやすくするために加えていて、作物にかかりやすくするためのものとは異なる、ということです。やはり、状況に応じて展着剤を選ぶ方がよいということです。
展着剤を入れると農薬の効果が高まるケース
トマトのハモグリバエの防除試験で、スピノエース顆粒水和剤、コテツフロアブル、カスケード乳剤、マッチ乳剤の効果が機能性展着剤を添加することによって殺虫効果が向上したという結果が出てます。
コテツフロアブルにはアプローチBI、カスケードとマッチにはニーズまたはスカッシュが組み合わせとして効果が高いとわかっています。
また、イチゴの炭疽病の試験では、ゲッター水和剤、アミスター20フロアブル、デラン、バイコラール水和剤(現在では製造、使用中止)の展着剤の添加による効果の向上が確認されています。
展着剤を入れてはいけない、または展着剤は不要というケース
さらにイチゴの炭疽病の試験を考察したところ、ベルクート水和剤とスカッシュの組み合わせでは効果が確認できず、ベルクート水和剤単体で散布した場合よりも効果が落ちてしまったという結果が出ました。ベルクートを使う際はスカッシュは使わない方がよく、ほかの農薬と混用するなどどうしても展着剤が必要であれば、一般展着剤を低濃度で使うのがよいということです。
他にもイチゴの炭疽病に適用のある、ジマンダイセンとアントラコール顆粒水和剤は展着剤を加えなくても高い防除効果と耐雨性を示す結果が出ています。つまり、この2剤は展着剤は不要ということです。
引用元:展着剤の基礎と応用-展着剤の上手な選び方と使い方-川島和夫著、養賢堂
展着剤の商品説明でよく見かける用語「アジュバント」
機能性展着剤の商品説明でよく見かける「アジュバント」について説明します。このアジュバントの意味を誤解されているケースがあるので、丸和バイオケミカルの担当者の方に直接問い合わせてみました。
アジュバントとはどういう意味ですか?
アジュバントとは主剤の効果を補強する目的でいっしょに使われる物質のことです。
展着剤でアジュバントというと何のことでしょうか?
機能性展着剤のことです。一般展着剤にはない機能が加わった展着剤を機能性展着剤として分類しています。
ここで勘違いが起きやすいのが、機能性展着剤のわかりやすい効果である「浸透性の付加」は、すべての機能性展着剤が持っている効果ではないということです。
たとえば、2020年発売されたドライバーという機能性展着剤は浸透性をほとんど持っていません。その代わり作物表面での濡れ広がりに特化していて、今までの展着剤ではかかりにくかったキャベツ、ネギ、サトイモなどにもしっかりと薬液がかかり、結果として薬液量が削減できるという副次的な効果もあります。
ほかにも、薬液の親油性を高めるという特徴のスカッシュがあります。この効果により、害虫の体や卵の表面に薬液を付着させてうすい被膜を作ることで農薬の効果を高めます。
そして、浸透性を高める機能を持った機能性展着剤が、そう、アプローチBIです。もともと農薬にはそれ自体が浸透性を持っているものがあります。そしてこのアプローチBIがその効果をさらに高めて効果を引き上げる役割をします。
注意が必要なのが、浸透性のある農薬の中でこのアプローチBIを使うと薬害が出やすくなるので混用しない方がよいものがあります。代表的なのがキノキサリン系、ストロビルリン系、アニリド系の薬剤です。
具体的な薬剤名で言うと、アミスター20フロアブル、カンタスドライフロアブル、デランフロアブル、モレスタン水和剤です。高温時や若葉への使用においては、さらに薬害の危険性が高まるので展着剤の添加は控えた方がよいです。
まとめ
機能性展着剤を中心にその特徴と効果のある組み合わせをみてきました。うまく展着剤を選ぶことできれば、それぞれの特徴を活かして農薬の効果を最大限に引き出し、薬液量の低減させることが可能です。散布回数が減ってコストや労力が削減できるのなら、展着剤をじょうずに使いこなすしかありません。基本をしっかりと理解して迷うことなく病害虫のコントロールをしたいものですね。
おすすめ機能性展着剤ベスト3
丸和バイオケミカル「ドライバー」
浸透性を持たない代わりに、濡れ性の向上に特化した展着剤。薬液をすみずみまで行き渡らせたい場合にぴったり。生長点近くに住み着く極小害虫のホコリダニなどにおすすめ。
引用元:500ml ファームトップ楽天3980円以上で送料無料
丸和バイオケミカル「アプローチBI」
浸透性向上と言えば、アプローチBI。タンク内が展着剤でぬるぬるすることからわかるように、付着性も向上。浸透性を持つ農薬の効果を高める。キノキサリン系、ストロビルリン系、アニリド系との混用には注意が必要。
引用元:500ml みのり楽天市場
丸和バイオケミカル「スカッシュ」
親油性を持つ展着剤。害虫の卵、体の表面に付着しやすい。殺菌剤とも相性がいいが、特に殺虫剤との混用がおすすめ。
引用元:500ml みのり楽天市場