受粉用マルハナバチのイチゴ栽培での活用方法 長生きさせるコツ!

イチゴ

 

 

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こんな人におすすめ
  • 受粉用にマルハナバチを使っているがもっと有効活用したい!
  • ミツバチを利用中だが、マルハナバチに切り替えても大丈夫か?
  • 巣を長持ちさせるための工夫が知りたい!

今回は、受粉用にマルハナバチを使っているがすぐに巣の寿命が尽きてしまい不受精果が発生している、またはマルハナバチを今後導入しようと考えている人におすすめの内容です。うまく使いこなして不受精果を減らせば収量がアップします。

マルハナバチ、ミツバチをそれぞれ使ってみた結論は、イチゴ栽培であればマルハナバチを絶対に使うべきです。

ミツバチ単独、マルハナバチ単独、マルハナバチとミツバチの同時利用すべてのパターンで試してみましたが、個人的にはマルハナバチ単独がいちばんよかったです。

メスのマルハナバチ
訪花するマルハナバチのメス
オスのマルハナバチ
葉の上で休んでいるオス

 

 

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ミツバチよりもマルハナバチをおすすめする理由

ミツバチでも受粉には使えますが、マルハナバチの方が断然扱いやすいです。私の周りでもマルハナバチ単独に切り替えている人が増えています。

ここでは、ミツバチの「生態」と「巣箱の構造」の違いから見て、マルハナバチをおすすめする理由を解説します。

マルハナバチをおすすめする理由は、

  • マルハナバチの巣箱は軽くて管理がしやすい
  • 低温でも受粉活動が活発
  • 巣の状態がわかりやすい

の3つです。それぞれについて解説します。

マルハナバチの巣箱は軽くて管理がしやすい

農薬散布する場合、巣箱を施設の外に出す必要があります。たとえ影響が少ない薬剤を使用する場合でも巣箱の中には幼虫や卵が入っているため、成虫よりも細心の注意が必要です。

ミツバチであれば、巣箱は木製で作られていることがほとんどで、施設の外に運び出すには大きく非常に重たいです。

その反面、マルハナバチの巣箱は段ボールとプラスチックでできているので非常に軽いです。加えて、大きさも約30㎝四方と(おすすめはできませんが)片手でも持ち運ぶことができます。

マルハナバチ巣箱
段ボール製のマルハナバチの巣箱(アリスタ社ナチュポールブラック)
ミツバチ巣箱
木製のミツバチの巣箱

低温でも受粉活動が活発

日の出直後の気温が低い時間帯でもマルハナバチは訪花活動を始めています。ミツバチは体が小さいため気温が低いとほとんど巣箱から出ていきません。

イチゴ栽培において、低温・低日照の厳寒期を乗り越えることが収量を上げるコツ、と言っても過言ではありません。それは施設内で受粉を行う訪花昆虫にとっても同じことが言えます。変温動物である昆虫は低温には弱く、ハウス内気温が10℃を下回っていると活動が鈍くなります。体の小さいミツバチは、冬の朝にはほとんど活動せずに気温が上がり始める午前10時ごろにようやく飛び始めます。

それにくらべてマルハナバチは、ある程度の明るさがあれば早朝でも夕方でもほぼ毎日飛び続けています。施設の屋根に雪が降り積もって気温が上がらないときでもマルハナバチは飛んでいるほどです。

巣の状態がわかりやすい

マルハナバチの場合、上部のフタを開けるだけで巣箱の内部を見ることができます。巣の大きさや働きバチの数など巣の寿命を把握しやすいです。

普段、エサの花粉を巣箱のなかに入れてやりますが、群れが元気だとちゃんと巣の内部まで運んでいきます。逆に、そうでないと巣箱の下のスペースにどんどん捨てられていきます。

プラスチックの内箱を持ち上げると、エサの花粉が捨てられていないかが簡単に確認できます。

一方、ミツバチの巣箱はクギで打ち付けられていて、気軽に開けることができないものが多いです。巣の内部を確認するには、金網の付いた小窓からのぞく程度しかできません。

使用するときの注意点

過剰な受粉活動

マルハナバチは1匹で1日に約3000回も訪花するといわれています。一つの巣箱が60匹入りとして、そのすべてが外勤の働きバチと仮定すると、計算上1日に18万回も訪花することになります。

ここで問題になるのが過剰訪花による奇形果の発生です。

ミツバチであれば、ほとんど過剰訪花を気にすることはありませんでした。しかし、マルハナバチを使用する場合は、施設の広さ作物の花数に注意する必要があります。

イチゴであれば、2000㎡で1箱(60頭前後)が目安とされています。また、花の開花ピーク期間は十分な花数がありますが、花房と花房の間の中休みには訪花の制限をする必要があります。

花数が少ない11月の様子
花盛りの頃の様子(品種:桃薫)

高温に弱い

また、マルハナバチはミツバチ以上に高温に弱いです。25℃くらいを限界にハウス内の気温の管理をしなければなりません。高温であればエサ蜜の消耗も早くなるようで、1ヶ月もたたないうちに満タンだったものが空になっていることもあります。

農薬の影響日数

農薬の中には、マルハナバチをはじめとする訪花昆虫にとって悪影響が出るものがあります。とくに殺虫剤は影響が大きいものがあるため、農薬メーカーのHPやマルハナバチ販売店などで確認するとよいです。

農薬を散布する場合は、巣の出入り口を閉じるのはもちろんですが、施設内から必ず搬出するようにしましょう。人間よりもはるかに小さい昆虫にとって、思っている以上に影響が出る可能性があります。マルハナバチの寿命を延ばすのに、とても重要なことです。

紫外線カットフィルム

紫外線の反射をたよりに、マルハナバチは花を探しています。そのため、紫外線をカットされた施設のフィルムを使った場合、マルハナバチの訪花に悪影響が出ると考えられています。

太陽からの光のなかには、紫外線という光が含まれています。紫外線は、ヒトの眼には感知されませんが、植物にやってくる昆虫たちの眼には感知されることが分かっています。
(中略)
例えば、アヤメの花では、私たちが普通にみると白いスジの模様がみえていますが(写真左)、紫外線写真でみると、その部分が黒っぽくなっています(写真右)。この奥に蜜があり、マルハナバチがもぐりこみ、その際に雌しべと雄しべに触れて、受粉の手伝いをします。

筑波実験植物園HP「さわろう!植物展 展示ブログ」より

マルハナバチは、370~380㎚付近の波長の紫外線を利用していると考えられるため、新しく施設を建設する場合やフィルムの張り替え時には確認しておくとよいでしょう。

イチゴ栽培での活用方法

うまく使いこなす上でもっとも重要なことは、やはり過剰訪花させないことです。過剰訪花が起きてしまうと奇形果が発生してしまうので問題となります。

私が行っている過剰訪花させない方法は、1日おきに巣門を開け閉めするということです。1日訪花させたら次の日は巣門を閉じて訪花させないというやり方をします。とくに花が少ない10月11月は、1日訪花させて2日間は訪花させないというやり方もしています。

あくまで感覚の話ですが、閉じている日数が2日以上と長くなってくるとストレスを感じているのか寿命が短くなるような印象があります。

実際には、花の状態をみて半日で巣門を閉じたり、急きょ午後から訪花させたりすることも行っています。

一番よくない使い方が、入れたら入れっぱなしにしてしまうことです。ミツバチでもマルハナバチでも同じことですが、巣と花の状態は必ず定期的にチェックをすることがうまく使いこなすポイントと言えます。

順調に育った巣内部の様子、巣の大きさも導入時から3倍くらいになっている

長持ちさせるコツ

マルハナバチの巣の寿命は約6週間が目安です。受粉を目的として利用する場合の寿命なので、実際には6週間たってもわりと元気に働きバチが出入りしています。

それでも、幼虫の世話をするメスは数が減っていき、代わりにオスが増えていきます。幼虫の世話をしないオスの数が多くなってきた頃が、新しい巣と交換する目安となります。

マルハナバチの巣の寿命をできるだけ伸ばして、すみずみまで訪花して受粉を行ってもらうには、働きバチであるメスをいかに大切にするかにかかっています。

寿命をむかえた巣箱の内部

長く元気で使うために心がけているのは次のようなことです。

長持ちさせる方法
  1. 巣箱に日よけと保温をする
  2. エサの花粉は毎日、夕方に入れる
  3. 働きバチのエサ蜜は2週間に1回補充する

日よけと保温を兼ねているはち頭巾というものがあります。直射日光による温度上昇を防いでくれると同時にカバー内部に蓄熱材が入っていて昼間の温度を夜間に少しずつ放熱するとても便利なものです。

ミツバチも高温には注意が必要ですが、マルハナバチはもともと冷涼な地域に暮らしているためにミツバチよりもさらに高温に弱いとされています。マルハナバチの巣箱も段ボール製のため、「熱しやすく冷めやすい」作りになっています。そのため、遮光と保温対策は必須となります。

さらに、遮光性と保温性を高めたものがてきおん君というものです。自然界ではマルハナバチは、土の中に巣を作ります。それにもっとも近い環境なのがこの資材です。

いちばんのメリットは、温度の変化を最小限におさえ、水や騒音からも守ってくれることです。また、毎日のエサやりも断熱材のフタを開けるだけなので、これまでとほとんど変わりません。

使用時の状態
フタを外した状態(アリスタ社ナチュポールブラックを利用)
上部のフタ中央には換気ファンがついている

エサの花粉の補充は、花粉の少ないイチゴ栽培では必ず行う必要があります。働きバチのためではなく幼虫のエサになるので、足りなければ次世代の働きバチが減ってしまいます。巣箱を購入したときに添付されてくる花粉を使用します。一日の訪花活動が終わる夕方に与えるのがベストだと考えます。朝に花粉を与えてしまうとエサが足りていると勘違いして、本物の花に行かなくなってしまう恐れがあるからです。不足したら購入して、必ず毎日与えるようにしましょう。

エサ蜜も購入もできますが、自分でその都度作っています。いろいろ試してみたのですが、上白糖:三温糖:水=1:1:1で溶かしたものが一番飲んでくれています。上白糖だけだと反応があまりよくないようでした。巣箱の下に入っている蜜の袋の口を外して中に注ぎます。

上白糖と三温糖
上白糖:三温糖:水=1:1:1で溶かしたもの
空になったエサ蜜、捨てられている花粉も少なく群れの調子がいい

よく利用しているのが、アグリセクトの「アグリ・トップ クロマルDX」です。1箱で約1000㎡の広さまで対応できます。イチゴであれば過剰訪花を考慮すれば、1箱で2000㎡まで十分使えると思います。

上記のてきおん君にピッタリ収まるように設計されていますので、すき間ができて誤ってマルハナバチが巣箱以外のところへ侵入する心配がありません。

ちなみに筆者は、巣が元気であっても2ヶ月をめどに新しい巣を入れていきます。なので約9週間は1つの巣箱で十分使えていることになります。

まとめ

イチゴ栽培での経験をもとにマルハナバチの効果的な使い方を解説してきました。

長持ちさせるには、花の状態とマルハナバチの様子を観察することが大切です。ミツバチと違って巣箱のお手入れがしやすく、内部も見やすいので群れの健康状態を観察するのに適しています。

毎日、ちょっとした変化に気づいて最低限のマルハナバチのお世話をしてあげることが、結果として収量のアップにつながっていくのでしょう。

マルハナバチをぜひ使いこなしてみてください。

参考文献

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イチゴ栽培技術
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