施設園芸で使われるビニールハウスは、その名の通りビニールで覆われているので定期的なメンテナンスが必要になります。
少しの破れであれば、テープなどでかんたんに補修することができます。しかし、大きく破れてしまったり経年劣化により透明度や強度が落ちてしまった場合はビニール自体を張り替える必要があります。
自分で交換することもできますが、今回は専門業者に工事してもらう場合の費用についてまとめました。
本当にこの部材って必要なものなのかな?
ぜひぜひ、これは新品に交換しましょう!
う~ん、やっぱり必要ないかも……
実際に3社で見積もりをとって、約半年のあいだ業者さんと打ち合わせていく中で本当に必要な部材を精査した結果が以下の通りです。
記事の後半では、実際に3社の業者さんと打ち合わせる中でどのようにして費用を抑えることができたのかポイントをまとめました。
フィルム(被覆資材)の種類と特徴
業者さんに工事を依頼するときに、ある程度の知識をもっておくといいです。まったく知らないと業者さんだけの都合で資材を選ばれてしまう可能性もあります。ここでは、業者さんと打合せする前に最低限知っておいた方がいい資材のひとつ、フィルム(被覆資材)について説明します。
ビニールハウスの外張りように使われるフィルムは農ビ、農POの2種類があります。露地栽培でつかう一般的なトンネルやマルチなどの素材よりも厚みがあり、強度に優れています。
種類 | 材質 | 耐候性 | 耐摩耗性 | 柔軟性 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
農ビ | 塩化ビニル | ○ | ○ | ◎ | 柔軟性があるが破れたらひろがりやすいのでマイカ線などの押さえが必要、長期展張には向かない。 |
農PO | ポリオレフィン系樹脂 | ◎ | △ | △ | ほとんど伸縮しないので押さえが不要。こすれに弱いが破れてもひろがりにくい。長期展張に向く。 |
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フィルムの張り替え時に交換が必要な部材
フィルムの張り替えをするときに同時に交換しておいた方がよいものがあります。
必ずしも交換が必要というわけではないですが、フィルムと同様に劣化していてある日突然こわれてしまうことがあります。
換気部分であれば、急を要することもあるのであわせて交換しておいた方がよい場合も多いです。実際に交換しておいてよかったと私が感じたものは、次のものです。
- 換気部分の押さえ用マイカ線
- 換気部分の巻き上げパイプ
- フィルム固定用のスプリング、パッカー
- 防虫ネット
フィルム固定用のスプリング、パッカーは、業者さんによると一応再利用可能とのことでしたが、実際に施工する職人さんの手間になるので相手側の都合によるものと思います。対応可能かどうか事前に確認するとよいでしょう。
また、換気部分の巻き上げパイプはモーターによるねじれの負荷がかかり続けるので突然破断することがあります。パイプが破断するとフィルムも同時に破れることが多いので、劣化しているかしっかりと確認が必要です。
ただ、巻き上げパイプは部材費のなかでも比較的高額になるので、可能であれば再利用を検討してみるといいです。この場合も事前に確認しておきましょう。
コストをおさえるポイント
上記のように、再利用可能な部材であれば交換せずに済むので費用を抑えることができます。ハウスの仕様にもよりますが、おおよその目安は以下の通りです。
巻き上げパイプ・・・・・・約15万円
スプリング、パッカー・・・約15万円(いずれも10aあたり)
このように、フィルム以外の部材が交換が必要かどうか業者さんと相談しながら決めていき、劣化が激しくなく工事の手間にならないものであれば再利用することで費用を抑えることができる場合があります。
そして、もっとも費用を抑えるうえでもっとも大きなポイントは、換気部以外のこすれない部分の交換は後回しにすることです。ようするに劣化した場所だけ交換することです。たとえば、今回の工事では換気部分だけにしてそれ以外は次回の工事のときに交換する、という感じです。
細かくみていくと意外と劣化していない部分が見つかります。張り替えようかな、と感じたら一度チェックしてみることをおすすめします。
最後は、補修できる部分は自分で行うことです。パイプが破断したらその部分だけ自分でカットして金具で接続したり、フィルムが破れたら専用テープで補修します。少しずつでも積み重ねて行うとそれだけで長持ちします。
コストをおさえるポイントまとめ
- 再利用できる部材を確認する
- 劣化した部分だけを張り替えていく
- できる補修は自分でやる
あると補修に役立つもの
- 補修テープ
- バッテリー充電式の切断工具
- パッカー外し
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とくに巻き上げ部のフィルムは傷みやすく、補修が必要になることが多いです。
POフィルムのように長期展張のものは、補修した後もテープが劣化しないものを選ばなければなりません。他のPO補修テープも試してみたのですが、この「テキナシテープ」が粘着剤の劣化も少なくはがれにくかったです。必ず常備しているアイテムのひとつです。
注意点は、貼り付ける面の汚れと水分をしっかりと取り除くことです。それだけで耐久性がぜんぜん違ってきます。
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すぐに使えるセット品がおすすめです。ハウスの屋根に上がって作業することもあるので、電源コードが邪魔にならないバッテリー充電式が必須です。
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専用のパッカー外し工具を使うメリットは、①被覆資材を傷つけない ②大量に外す際の効率の良さ、が挙げられます。中でもこの「パッカン」は被覆資材に直接工具が触れない仕組みなのでおすすめです。
自分の経営にあったフィルムを選択する
フィルムを選ぶうえで重要となるポイントは、3つあります。
- 金額
- 張り替える頻度
- 作物にあわせた機能
1.金額
フィルムの機能の違いによって金額が異なります。フィルムの内側には結露による水滴がつくのを防いだり紫外線の透過を減らす薬剤が塗られているものが多いです。塗られているのものだけでなく、フィルムに練りこんであるものがありそれぞれ価格が違います。
フィルムの値段は総工事費用のうち約半分を占めます。そのため不要な機能のついたフィルムを選ばないだけでも費用をおさえられる場合があります。
また、同じメーカーのものであっても施工業者によって金額がちがうこともあります。必ず見積もりを比較したうえで決めるようにします。
2.張り替える頻度
作型によっても違いがありますが、作ごとに張り替える場合であれば農ビ、3~5年以上張りっぱなしであれば農POが基本です。
また、金額は上がりますがエフクリーン(AGCグリーンテック)という商品は、20年以上の長期展張が可能です。その分張り替え頻度が減るのでコストダウンにつながります。
張り替えのたびに発生するコストとして意外と忘れがちなのが、ビニールの処分費用です。産業廃棄物に該当するため業者さんに処分してもらうことが必要です。
筆者が確認したところ、ビニールの重さで金額が決まったり、張り替える新しい方のビニールの面積で決まったりと業者によって対応が異なりました。
事前に確認して処分方法は業者任せにしないようにすると費用を抑えることにつながります。
3.作物の種類
直射光による日焼けを防ぎたい果菜類では梨地タイプを選んだり、受粉のためにマルハナバチやミツバチを利用しているハウスでは紫外線抑制タイプは選ばないなどの工夫が必要です。
作物によって栽培方法が異なるので、それに適した機能を選ぶことが大切です。
まとめ
最近のフィルムは性能がよくなり各メーカーが耐久性の高い商品をラインナップしています。ビニールハウスの張り替えにかかる費用は工夫次第で安くすることができます。
納得のいく工事を行ってもらうために、施工業者と打ち合わせる前に予備知識をもってのぞむことをおすすめします。