施肥設計のきほん、肥料の三要素とイオン

栽培技術

 

 

この記事は、養液栽培において施肥設計を自分でやろう!と考えている人に必須の内容になっています。イオンの表は覚えなくてもいいので、忘れてしまったときに何度も見返してください。肥料計算をするときに必ず役に立ちます。

ほとんどの植物は地面に根を張って、そこから水分と養分を吸って生きています。

根っこは、地上に見えている部分(地上部)を支えています。そのおかげで葉をしっかりとひろげ、充分な光を浴びることができます。

もしも、根張りが弱くて不安定な体勢になってしまったら、光をしっかりと浴びることができず光合成が行えなくなってしまいます。

そのほかにも、根っこは光合成で作られたものを保存しておく貯蔵庫でもあります。

根のはたらきに影響するのは、主に温度、水分量、肥料、酸素濃度です。

今回はその中の植物のからだの材料になる、肥料について説明します。

 

 

 

植物がからだを作る材料

人間でも体を動かすためにエネルギーや骨や筋肉をつくる材料などが必要です。そのために、糖やタンパク質、脂肪など植物や動物を食料として摂取し続けなければなりません。

有機物を消化管で、ある程度分解・吸収して、再度合成して自分の体を維持して生きているのです。

しかし、植物は微生物によって水に溶けるほどに細かく分解された養分(無機物)を光のエネルギーを使い、有機物を合成できるのです。

無機養分のなかで代表的なものが、

窒素N、リン酸P、カリウムK (肥料の三要素)です。

肥料のパッケージに書いてある「8-8-8」とか「7-5-5」といった表示がそれらの成分比です。

これはパーセント表示なので10㎏入りの肥料なら

「8-8-8」はN-P-Kがそれぞれ8%、つまり800gずつ
「7-5-5」はN-7%、P-5%、K-5%、つまり700g、500g、500g、

それぞれ含まれているということです。

10kgの場合NPK
8-8-88%8%8%
800g800g800g
7-5-57%5%5%
700g500g500g

ほかにも、カルシウムCaやマグネシウムMg、硫黄Sなどの多量要素が肥料の成分表に書かれていることがあります。

成分の比率を変えてさまざまな作物に合わせた専用肥料が販売されているのはご存じの方も多いと思います。

イオン化

窒素N、リン酸P、カリウムK、カルシウムCa、マグネシウムMg、硫黄S、そのほか微量要素である鉄Fe、マンガンMn、ホウ素Bなどは水に溶けたときにイオンという状態になります。

イオン化した成分を植物は根から吸い上げています。

とくに、養液栽培において肥料は水に溶かした状態で使用するので、土に施肥する場合と計算方法が異なります。
窒素N、リン酸P、カリウムK、カルシウムCa、マグネシウムMg、硫黄S、そのほか微量要素である鉄Fe、マンガンMn、ホウ素Bなどは水に溶けたときにイオンという状態になります。

イオン化した成分を植物は根から吸い上げています。

とくに、養液栽培において肥料は水に溶かした状態で使用するので、土に施肥する場合と計算方法が異なります。

肥料成分ごとの元素記号とイオン分子記号は次のようになります。

成分元素記号イオン分子
窒素NNO3,NH4+
リンPPO43-
カリウムKK+
カルシウムCaCa2+
マグネシウムMgMg2+
イオウSSO42-
FeFe2+,Fe3+
マンガンMnMn2+,Mn4+
亜鉛ZnZn2+
CuCu2+
塩素ClCl
モリブデンMoMoO32-
ホウ素BBO33-
ニッケルNiNi2+

イオン化というのは、+か-のどちらかの電気を帯びるということで、物質ごとに水に溶けたときにどちらに荷電する(電気を帯びる)か決まっています。

多くの成分が+の電気を帯びます。一方、-の電気を帯びるのは、主に硝酸イオンとリン酸イオン、硫酸イオンです。

私自身はじめは、+-なんてどちらでもいいって思ってましたが、園芸においてはとても重要なことがあったのです。

それは、土は-の電気を帯びているので+イオンを吸着するということです。

つまり、上の表で言えば、NH4+、K+、Ca2+、Mg2+、Fe2+、Fe3+、Mn2+、Mn4+、Zn2+、Cu2+、Ni2+は土に吸着しやすいといえます。

次作のために、土に残っている肥料分を調べる土壌診断を行うことがあります。無駄な肥料を減らし、必要な成分だけを継ぎ足すことができるので植物にとっても環境にとっても都合がよいのです。

必要なものを過不足なく与える

N-P-Kのことを「葉肥え」、「実肥え・花肥え」、「根肥え」と言うことがあります。

サツマイモ栽培ではいもの部分を大きくしたいと考えます。簡単にいえば、いもは根っこなので根肥え=カリウムを多めにしよう、という感じです。

また、果菜類は花・実をたくさんつけることで収穫量を増やすことができます。その場合、実肥え・花肥え=リンを増やそう、というように作物にあった肥料を過不足なく与えることでムダの少ない施肥が行えます。

また、昨今の世界的な食糧需要の増加による肥料需要の上昇、原油価格の高騰によって肥料価格が上がり続けていることを考えるとコスト削減のためにも必要なことと言えます。

養液栽培では作物に合わせて肥料をブレンドする

作物によって必要な成分量は違います。

同じ作物でも品種が違うと微妙に要求量が変わることもあります。

生長の段階によっても必要な成分も変わってきます。

そこで目安になるのが農水省の試験場や大学や肥料メーカーで研究された培養液処方です。有名なのが園芸試験場処方(園試処方)や山崎処方と呼ばれるものでメーカーでの肥料設計の基礎にもなっているものです。

それぞれの処方では、窒素N・リンP・カリウムK・カルシウムCa・マグネシウムMgについて成分別に濃度の目安が設定されています。

また、これらの処方は作物別にも作られていて、トマト・ナス・ピーマン・キュウリ・メロン・イチゴ・レタス・ミツバ・シュンギク・ホウレンソウなどそれぞれに適した配合の目安がわかります。

自分が作りたい作物の処方を参考に養液を配合して、イメージ通りの収穫量や品質かどうがフィードバックを繰り返すことが重要となるでしょう。

具体的な肥料計算の方法はこちらの記事で紹介。

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