いちごの品種改良 ホームセンターにあるもので家庭でもできる方法

イチゴ

 

 

世界でもトップクラスの品質を誇る日本のいちご。その評価は、海外に持ち出されて新たな品種改良に用いられるほどだ。盗まれた日本の品種レッドパールが韓国で栽培され、はては品種改良に使われてしまったということも記憶に新しい。

実はいちごの交配自体はとてもかんたんで個人でも品種改良をすることができる。かんたんとは言っても最低限ひと通りの栽培はできなければならないが、ホームセンターなどで手に入るもので事足りる。

手軽に優良な品種のいちごの苗が手に入る日本だからこそ、個人でも新たな魅力ある品種を生み出せるかもしれない。今回、記事の作成にあたり県農業技術センターへ複数回見学をし、育種担当者の意見も参考にした。

 

 

 

必要なもの

  • イチゴの苗
  • ピンセット
  • 小さめの紙袋
  • 種まき用の土

たったこれだけあれば交配ができる。ピンセットは雌しべ以外のものを取り除くのに使う。紙袋は、狙った花粉以外のものを受粉させないようにカバーするためのものだ。専用のものもあるが小さめのもので通気性があればよい。種まき用の土を入れる容器は野菜苗で使われているポットやプランター、プラグトレイでいい。

種子親と花粉親

種子親とは種採りするベースとなるイチゴのこと。花粉親とは文字通り花粉を採るイチゴのこと。言ってみれば、種子親は母親、花粉親は父親となる。

受粉する

種子親となるいちごの花からおしべを取り去る。いちごは自家受粉してしまうため種子親の花に付いているおしべを開花・開葯する前につぼみを開いて取っておく。対して、花粉親となる花は開花した午前中に4,5花集めておき、先ほどのおしべを除去した種子親のめしべに直接軽くなでるように受粉する。花粉には受粉能力に時間制限があるので必ず集めた花粉は直ちに使い切る。

ガク、花びら、雄しべを取り除いたもの
狙った品種の花粉で受粉したら他の花粉がつかないように
受粉に成功すればあとは熟すのを待つ

種採り

熟した実から種だけを集めるのだが、その集め方はいろいろある。ストッキングなどの袋状の目の細かいネットに種以外の部分を水で洗い流し濾し取る方法、ピンセットでひと粒ずつ種を取り外す方法などがある。個人的にはピンセットで外す方がやりやすい。水で洗い流す方法は果肉の繊維が種と絡まってしまい分別しにくい。ただどちらにしてもピンセットでひと粒ずつ種を取るのは変わらないので非常に根気がいる作業になる。注意するのはしっかりと受粉している種を取ることだ。後述するが、受粉がうまくいっていない種はきちんと肥大せず、他のものと比べて小さい。それらは発芽率が下がるので使わない。

取り外した種を組合せごとにペーパーの上で乾燥させる
乾燥させた種は種類ごとに袋で保管

発芽させる

うまく受粉した種は発芽する。次の画像の青線で囲った部分の種は受粉が成功しているため種まきに使える。反対に黄色で囲った部分は失敗していて種が肥大していないので使わない。

イチゴの発芽条件

  • 光が必要
  • 温度は25〜30℃
  • 水は絶対に切らさない
先細ピンセットでひと粒ずつ5mmくらい乃深さに埋める

いちご種子の発芽条件は好光性であり、光があると発芽しやすくなるので種は深く埋めてはいけない。薄く土をかぶせる程度にする。

温度は35℃以上になると発芽率が下がる。とくに真夏の炎天下のような場所だと40℃以上になり、2割にも満たないこともある。

屋外で風が強い日だとよくあるのだが、朝水やりして夕方にカラカラになることがある。発芽しかけた種は、非常に乾燥に弱いので絶対に水を切らしてはいけない。風の当たる乾きやすい場所はできるだけさけて、適度に湿った状態を保つようにする。

ポットでも十分発芽するが確実にしたいなら乾燥防止カバーを
発芽直後の実生苗 発芽専用の容器は発芽率が高い

培地選び

肥料分は無くてよい。パーライトやバーミキュライトなどを含む、水はけのよい土が向いている。さし芽や種まき用のものがホームセンターで購入できる。筆者は野菜用の培土とさし芽種まき用のものを2種類同量混ぜて使っている。

左が野菜用、右は種まき用
は種から約2ヶ月後の様子
定植直後の様子。ランナー苗と違い、花房の出る向きはわからない
白品種(種子親)と赤品種(花粉親)の交配株

まとめと参考書籍

交配の基本的なやり方はかんたんでイチゴを育てたことのある人ならできる。思った通りのイチゴができるまで根気よく継続することが必要だ。

今回、参考にした書籍は以下のものだ。

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イチゴ栽培技術農業経営
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