みなさんは、ひと月に本を何冊くらい読むでしょうか?
筆者は、だいたい10冊くらいの本を読んでいます。農業関係の本やビジネス書などが多いです。時間があるときは一気読みしますが、忙しい時期はちょっとずつ別々の本を並行して読んでいます。
就農してからは、農業関連の本を読む機会が圧倒的に増えました。経営や栽培技術に関する本がいろいろ本屋さんに並んでいるので気になったものは、中をチラ見して購入しています。
今回は、新規就農する前に読むべき本、すでに就農して農業者となった人におすすめの本を紹介していきます。
新規就農する前に読むべき本
ゼロからはじめる! 脱サラ農業の教科書
著者の田中康晃氏は、合同会社エースクール農業起業塾代表であり、自身も非農家出身でゼロから農業を始めている。行政書士の肩書きも持つ法律的な農業支援も可能というすごい方です。就農希望者に向けた農業塾を行っているため、新規で農業を始めようと思った方にピッタリの本です。脱サラして農業を始めようと思っても、何から手を付けたらよいかわからないなんてことは、新規就農者であればほとんどの人が経験したことではないでしょうか。本の中では、具体的な営農計画、資金計画の立て方や研修先を見つける方法など新規就農を考えている人が知りたい内容が網羅されています。自分が就農する前に読んでおきたかった本です。
読みやすさ・・・・・★★★★☆
実用度・・・・・・・★★★★★
農で起業する! ―脱サラ農業のススメ
著者の杉山経昌氏は、外資系の半導体メーカーから一転、新規で農業を始めた方です。杉山氏のすごいところは、テレビで宮崎県のある地区で移住を推奨しているという話題を知ったのがきっかけで、東京にある宮崎県の出張所に直接電話をかけてしまうという行動力。それにとどまらず、出張所の担当者が「対応するので宮崎県庁にある農林水産課まで来てほしい」と言われると、食料を積んだワンボックスカーの乗り、自らの運転で50時間かけて行ってしまったほど。本の内容は、ご自身が就農するまでの行動内容が語り口調でドラマチックに書かれていて、読んでいて純粋に楽しめます。おそらく、杉山氏だからこそできた就農方法なんだと思いますが、就農するうえで基本的な考え方や仕事のやり方などは誰にでも参考になるでしょう。私自身、就農の数年前に実際に読んでとても参考になりました。
読みやすさ・・・・・★★★★★
実用度・・・・・・・★★☆☆☆
最強の農起業!
筆者もこの本を書いた畔柳茂樹氏のブルーベリー農園を訪れたことがあります。サラリーマンを辞めて新規就農を考えていたころ、脱サラしてブルーベリーを作っている人が経営する観光農園がある!と知り、さっそくブルーベリー狩りをしに足を運びました。今では、セミナーを開催するほどの超有名農業者の畔柳氏。結局、筆者自身はブルーベリー栽培での就農は選択しませんでしたが、企業的農業経営の発想は非常に参考になりました。その一方で、精神的、時間的にも余裕のある生活を送る「自由」を両立させようという姿勢は多くの人が共感するのではないでしょうか。本の内容は、ブルーベリー農園を立ち上げた際の基本理念、戦略など具体的に書かれています。特に、マーケティング思考にもとづいたポジショニングや価格設定は、新規就農しようと考えている人にとっては必須の内容だといえます。
読みやすさ・・・・・★★★★☆
実用度・・・・・・・★★★★★
農業者になった人におすすめの本
マッキンゼーが読み解く食と農の未来
マッキンゼー。ビジネスパーソンなら一度は耳にしたことがあるんじゃないでしょうか。正式にはマッキンゼーアンドカンパニー、米国最大規模の戦略系コンサルティング会社の一つです。執筆当時、マッキンゼー日本支社長だったアンドレ・アンドニアン氏が中心となって書いた本です。さまざまなデータを使って読みやすくわかりやすく、食料と農業の未来について解説されています。見慣れないデータを一般の人にもわかりやすく図説するところがさすがといったところです。肝心の本の内容ですが、日本の農業に影響を与える世界の気候変動や食糧需要の増加、技術革新、政策の変化などの予測がデータにもとづいて詳しく解説されています。そこから導かれる日本の農業がとるべき方向性が書かれている点がこの本の真価であると言えます。農業業界にある程度なじみがある人向けです。
読みやすさ・・・・・★★★☆☆
実用度・・・・・・・★★★☆☆
農家はもっと減っていい 農業の「常識」はウソだらけ
(株)久松農園代表の久松達央氏の本。久松氏の本は以前にも読んでいるが、今回はページ数があり、ボリュームたっぷり。日本の食料自給率が低くて、これ以上農家が減ったら困るのになぜ「農家はもっと減っていい」んだ!?気になっちゃうタイトルですね。なんで減っていいのか、日本の農業の構造からみて詳しく解説されています。本当に農業者なの?と思うくらい多くの文献をもとに学術的に語られているんです。とはいえ、この部分はおそらくは「つかみ」なので、その後の章が本当の見どころになっているのでしょう。後半では、農業経営者やビジネスパーソンにとって、経営や仕事のヒントとなることが具体的に書かれていて非常に参考になります。特に、8章の仕事論や9章の心と体のパフォーマンスを上げる部分について言えば、農業者でなくともすぐに実践すべき内容になっています。久松氏は、自身のことをまえがきで「学者でも、ジャーナリストでもない」と述べていますが、一農業者が書いたとは思えないような情報量がこの本にはつまっています。おすすめです。
読みやすさ・・・・・★★★☆☆
実用度・・・・・・・★★★★★