イチゴの花芽分化 温暖化対策 コントロールするには?

イチゴの花芽分化 イチゴ

 

 

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イチゴの生態はとても複雑です。イチゴ栽培を経営面からみても、その生態を理解して効率的な栽培管理を行うことは必須のことといえます。今回は、その中でもとくにコントロールがむずかしい一季成り性のイチゴの花芽分化について解説します。

花芽分化とは、文字どおり細胞が花芽に分化することです。ふだんは葉を分化している生長点が、「ある条件」になったとき花芽に分化します。

その「ある条件」というのが以下の3つになります。

  1. 短日
  2. 低温
  3. 低窒素

イチゴ栽培では、これらの3条件をコントロールして、遅れることなく安定して花芽分化をさせます。そうすることで、イチゴに花・果実を付けさせ、狙った時期にイチゴを提供できるようにしています。花芽分化の促進技術が研究されているのは、まさにこのためなのです。

イチゴは、花芽分化の条件で一季成り性四季成り性と2つに分けられます。四季成り性は、長日・高温で花芽分化が起きるので夏イチゴの栽培に用いられます。一方、一季成り性は上記のように短日・低温で分化します。

どちらの品種も低窒素で分化が促進することは変わらないので、日長と温度の管理が異なるということです。

 

 

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花芽分化の3要素

ビニールハウスで栽培される一季成り性のイチゴは、自然条件では秋になると花芽分化が起きます。つまり、秋の日長と温度が花芽分化を起こすカギを握っています。

ここで重要になってくるのが、毎年少しずつ違う気象条件であったとしても、安定して花芽分化をさせるということです。

短日

秋になれば、まず間違いなく日長(日の出から日の入りまでの時間)は短くなります。日長が年によって違うことはないので、コントロールするのであれば夜冷などの日光の遮断を行います。

低温

気温は、3つの条件のなかで花芽分化に最も影響を受けます。およそ5℃~15℃の範囲であれば日長は関係なく、15℃~23℃の範囲だと短日条件で花芽分化をします。これらの範囲外の5℃以下の低温だと生育が停止したり、30℃以上の高温になると全く花芽分化が起きなくなります。

低窒素

イチゴの体内窒素が少なければ、日長・温度の影響を受けやすくなるので、花芽分化が促進されます。低窒素は、花芽分化の絶対条件ではありません。そのため、苗の生育が悪くならない程度に窒素を保つようにします。筆者は、定植直前の9月上旬に硝酸態窒素濃度で400~800ppmを目安に管理しています。

窒素が少なく生育が弱い苗

生殖生長と栄養生長

生殖生長と栄養生長のバランスが大切と言われます。一季成り性のイチゴにとって、生殖生長はまさに花芽分化が進んでいる状態をさします。一方、栄養生長は葉をつぎつぎと展開して春のようなおう盛な生育の状態のことです。

この二つの矛盾した状態を意図的につくり出すことが、収量を上げるポイントになります。

生殖生長に傾けば、葉の展開が遅くなり葉面積が減少することにより光合成量の低下を招きます。反対に、栄養生長に傾いても花芽分化が遅れたり、そのあとに大きすぎる実をつけて結局「なり疲れ」となっていしまいます。

バランスのとれた生育には、常に適度な着花負担と草勢が必要です。

温暖化の花芽分化への影響

以前であれば、8月下旬には最低気温が20℃を下回る日が出てくることが多く、9月上旬には花芽分化の兆しが見えてくるのがあたりまえでした。しかし、最近の温暖化の影響で9月になっても高温が続いて分化が遅れる年が出ています。特に、2023年の猛暑は花芽分化を著しく遅らせ、9月下旬以降になった農家が多いと聞きます。

そういった状況のため、窒素の中断を行うことで分化の遅れを緩和しようとしていました。しかし、近年8月に梅雨のような長雨が発生するようになったため、今度は逆に不時出蕾が発生してしまいました。

「佐賀i9号」の花芽分化は、日平均気温が低いほど早くなり、日平均温度が同等の場合、昼温が低い方が早くなることが明らかとなりました(図1)。

佐賀県農業試験研究センターニ ュ ー ス 第16号 令和2年12月

佐賀県の「佐賀i9号=いちごさん」のように昼間の気温が低いと花芽分化が早まるという報告があります。つまり、日中の天気が悪いと気温が上がらずに花芽分化が安定しなくなるということです。

これから極端な残暑の高温や長雨がますます増えてくるようになると、花芽分化がバラついてしまい安定したイチゴ生産が難しくなっていくことが予想されます。

花芽分化のコントロール

観察しやすいようにインクで染められた花芽

温暖化で花芽分化が安定せず、極端に早まったり遅れたりする可能性があります。そこで、それを防ぐ技術が研究機関で開発されています。

クラウン冷却装置

軟質塩ビ製のチューブに冷却水を流してクラウンを直接冷やすという技術です。ヒートポンプ式の冷却・加温の両方が可能な装置を使います。

定植してから使用するため、2番花の分化の促進につながるということです。

【参考1】促成イチゴ栽培で早期収量の増加と収穫の平準化が可能なクラウン温度制御技術‐農研機構
【参考2】イチゴのクラウン温度制御 実証技術マニュアル – 宮城県

間欠冷蔵処理

岡山大学が中心となって開発した、果実予冷用の冷蔵庫を活用した花芽分化促進技術です。13~15℃の低温と予冷庫の暗黒条件を利用します。

予冷庫に3日間、自然条件3日間を3回繰り返します。それにより、花芽分化を1週間程度早めることが可能ということです。

【参考】間欠冷蔵処理によるイチゴの花芽分化促進-処理技術の理論と実際-農研機構

花芽分化を遅らせる技術

不時出蕾のように早すぎる花芽分化を防ぐ技術です。8月下旬に電照を10日間行うことで、頂花房の出蕾を5日程度遅らせることができるというものです。

【参考】イチゴ「美濃娘」の花芽分化制御による秋季高温化対策技術‐岐阜県農業技術センター

まとめ

イチゴの花芽分化は、複数の要素がかかわってくるのでコントロールが難しいです。加えて温暖化による影響もあり、安定した花芽分化の制御の技術が今後も求められているといえます。

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イチゴ栽培技術
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