いちご うどんこ病の予防と治療 おすすめの農薬

イチゴ

 

 

イチゴ栽培をしている方であれば、うどんこ病の胞子がついた果実を見て「ドキッ」とした経験あると思います。

まさに今、うどんこ病が出はじめてしまって「何とかしたい!」と考えて、この記事にたどり着いた人もいるのではないでしょうか。

育苗期間であれば、比較的農薬の選択肢も多いです。しかし、収穫シーズンともなると天敵のカブリダニや訪花昆虫への影響や収穫前日数などの理由で使用できる農薬が限られます。

また、耐性菌が出ないように薬剤の系統も意識して選択しなければなりません。そもそも耐性菌の出現により効果が低い農薬もあります。

ただでさえ、収量に大きく影響する病気であるのに、使える農薬を選ぶのがとても難しいと言えます。

薬剤が効かずに防除を繰り返し、り病した果実を処分して、毎日神経をすり減らしてしまった、なんて経験一度はあるのではないでしょうか。

農薬を選ぶときに、天敵やハチへの影響も気にしなくてはならないし、種類もたくさんあるからどれを選んだらいいのかわからない!という方もいると思います。そんな悩みを少しでも減らそうと、天敵やハチへの影響、農薬の系統をふまえたおすすめの農薬選びを中心に、効果的なうどんこ病対策をまとめました。

収穫期におすすめの農薬」では、FRACコードごとに薬剤を分類して表にまとめました。同一コードの薬剤が連続しないようにローテーションを組むだけで抵抗性の抑制が期待できます。また、予防治療も参考にして適切な薬剤を選択してください。

 

 

 

うどんこ病がやっかいな理由

いちごの葉に感染したうどんこ病 殺菌剤により死滅しているが委縮した葉は元に戻ることはない
  • 葉や花、果実にも感染するので商品にならない
  • 農薬が効かない場合がある

そもそも、うどんこ病が果実の商品価値をなくしてしまうので困ります。感染した場所は萎縮してしまい、もし地上部全体に広がってしまうと生育がとても悪くなります。胞子が飛んでしまえば、肉眼で確認できないので、気付いた時には感染が拡大しています。

やはり、うどんこ病対策は予防が一番効果的です。

そのためには、定期的な薬剤散布が大切です。特に、薬剤の抵抗性に注意をして、同一作用機序のものは連続して散布しないようにする必要があります。

どうしたらよいかというと、殺菌剤は薬剤ごとにFRACコードでグループ分けされているのでそれをもとにローテーションを組みます。

とはいえ、出てしまった場合には治療のための薬剤を散布しなければなりません。

収穫期におすすめの農薬

収穫期のうどんこ対策に的をしぼるので、使用時期が収穫前日までのもの、天敵と訪花昆虫に影響が少ないものを基準に選びました。

私自身、表にある薬剤をローテーションして使っていますが、実際に使用される前には使用回数や濃度、薬害の出やすさなどのパッケージ記載の注意事項を必ずご確認ください。また、複数の薬剤を混用する場合はメーカーの事例を参考にするとよいです。

FRACコード天敵にほぼ影響ない訪花昆虫への影響1日天敵への影響1日
なしサンクリスタル乳剤(治療)
フーモン
NCカリグリーン水溶剤(治療)
BM2インプレッションクリア(予防)
M7ベルクートフロアブル(予防)
50プロパティフロアブル(治療)(予防)
7ケンジャフロアブル(治療)(予防)
ネクスターフロアブル(予防)
パレード20フロアブル(治療)(予防)アフェットフロアブル(治療)(予防)
11スクレアフロアブル(治療)(予防)
U6パンチョTF顆粒水和剤(治療)(予防)
U13、9ショウチノスケフロアブル(予防)

展着剤も必ず使用しています。こちらの記事を参考に、展着剤を上手く活用してみてください。

予防剤と治療剤 どう違うの?

殺菌剤に関する質問で多いのが、予防と治療はどのような違いから区別されるのか?という内容です。大ざっぱにいえば、浸達性または浸透移行性があるかという違いになります。

うどんこ病や灰色カビ病のような糸状菌は、胞子が植物の表面に付着するとそこから菌糸を伸ばしていき、植物体内から養分を吸収しています。この状態になると、いわゆる「感染」していることになり、治療が必要になります。この時点では、予防剤では効果がなくなります。予防のためには、あくまで胞子が植物の表面に付着したときに効果を発揮しなければなりません。

なので、予防剤は健全な状態のときに植物体の表面をコーティングして胞子の付着や菌糸の侵入を防ぐのです。菌糸が植物体内に菌糸を伸ばしてしまったあとは、浸透する治療剤を使って内側から殺菌します。

うどんこ病の生活環 石原バイオサイエンス「プロパティフロアブル」技術資料より引用

薬液散布時の注意点

イチゴのうどんこ病で薬剤を散布するときに注意してほしいのが、葉裏に届くようにかけることです。

どんなに効果のある農薬でも感染部位にかからなければ意味がありません。浸透性や移行性がある薬剤でも感染部位からあまりに離れていれば効果が劣ることが考えられます。

必ず感染している株を中心に、念入りに葉裏まできっちりと行き届かせることが大切です。また、胞子の飛散も考えて、周辺のシートなどにも散布しておくことが望ましいです。

うどんこ病におかされて萎縮した部分は回復することがないので、治ったかどうかの判断がとても難しいです。できれば1週間ほど開けて、別の系統の薬剤で処理するとよいです。

その際には、サンクリスタル乳剤やカリグリーン、インプレッションクリアなど耐性菌が出にくい薬剤を混用すること、そして化学的作用機序の異なる薬剤を交互にローテーションを組むようにします。

対策のまとめ

天敵等の影響、FRACコードをふまえたローテーションを組む

殺菌剤の使用で基本中の基本です。同一系統の薬剤は連続または近接散布しないことです。

葉裏に届くように散布する

治療剤が効かない原因のひとつです。かけ残しがあることでうどんこ病が再発します。必ず葉裏にまで十分に薬液をかけることが大切です。

出てなくても予防!

イチゴのうどんこ病対策として最も効果的なのは、やはり予防に尽きます。

筆者自身が、「うどんこ病が出ていないから、予防剤を入れなくてもいいだろう」と思いがちでした。

しかし、うどんこ病は発病するまでは目で確認することは不可能です。春や秋に気温が20℃くらいになったときに意識をし始めて、とにかく予防に徹することで被害を格段に減らすことができます。

うまく管理すれば、うどんこ病は抑え込むことが可能です。まずは、上記のうどんこ病対策を参考に自分のスタイルを確立してみてください。

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イチゴ栽培技術
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